01*ラジカセとプリントゴッコ / よしのももこ

編集室屋上のさやかさんとのご縁から、こちらで書かせていただくことになった、よしのももこという者です。

はじめは自己紹介を、と思いましたが、自分で紹介できるほどよくわかっていないので書こうとすると手が止まってしまいます。これといった職業もないので「ももこさんは何をしている人なの?」とよく聞かれ ますが、聞かれるたびに真剣に困ります。

今も困っているのですが、ひとつだけ取っ掛かりがあるとしたら、さやかさんと私をつないでくれたのは音楽です。なので音楽のことを書いてみたいとおもいます。

私は18歳のとき(1992年)に、カセットテープをリリースする小さなレーベルを始めました。15mins. paradice factoryという、今となっては割とこっぱずかしい名前のレーベルです。20分テープに、両面合わせて15分ぶんぐらいの音源を収録するというコンセプトだったのでこんな名前になったように記憶しています。

最初のリリースの動機は簡潔で、自分のつくった曲を外に向けたかったからです。「デモテープをつくっていろんな人に渡す」っていう発想は最初からなくて、音源として売ることしかおもいつきませんでした。といっても、生まれた曲たちを外に向けて、それによってどうしたいという「目的」のようなものはぜんぜん無かったのですが。

自宅でカセットMTRで録音した曲を、秋葉原で安く買ってきたソニーの20分テープに自宅のWデッキのラジカセでダビングして、色画用紙にプリントゴッコでレーベルのロゴとタイトルなどを印刷したものをケースの形に組み立てて、西新宿や吉祥寺のレコード屋さんまで納品に行き、レーベル新聞を書いて配る、というのをぜんぶひとりでやってたんですが、今おもい返してもめちゃ楽しかったですねー。

その後10年ほど、録音物をつくったり、人前で演奏したり、小冊子をつくったり、いろんなことをしながら日々生きていましたが、やっぱりいちばん最初のカセットテープ時代の15mins.でやっていたことにすべてが凝縮されていた気がします。

はじめは月イチで、同じデザインの色違いの紙ケースで、ぜんぜん違うバンドの音源を立て続けにリリースするという形態でやっていました。前年の91年にイギリスのSeminal
Twangというレーベルがやり始めた、月イチで7インチシングルをリリースするシリーズ企画の「感じ」がすごく好きで、その「感じ」を自分でやってみたかったんです。Seminal Twangの7インチたちもジャケットの基本フォーマットが毎回同じだったのですが、バンドや歌手ごとにイラストなどのテイストが違ってて、バンドのタイプもバラエティに富んでいて、なんともワクワクする「感じ」がありました。

その「感じ」というのが、私にとっては、それがどんな音楽かとかどんなバンドかとかよりもずっと重要で、とにかく私はいつも「感じ」に触れていたかったし、「感じ」を放射したかったのです。自分で曲をつくるときも、リリースするときも、読み物を書くときも、たぶん動機はすべてそれでした。

「感じ」っていう言葉はそんなにぴったりではないので、もっとうまい表現がみつかればよいのですが。「雰囲気」とか「ジャンル」などとはぜんぜん違うもののことです。日本語を離れれば、「バイブレーション」あたりがいちばん近いのかもしれません。

「感じ」についてもう少し書きたくなってきましたが、また次回にします。


2013-03-01 | カテゴリー どこにもないエリアで会いましょう |