本屋のニカさん

気づいたらもう1ヵ月も経っていた。
こういうことは瞬発力でドーンと書き残さないといけないな。

 
さかのぼれば、一番最初に「北書店で二階堂さんのライブやることになったから。林さん来るでしょ?」という電話がかかってきたのは去年の春だった。わたしは初めての妊娠で、安静指示が解けたばかりだったし、新潟に行くのはちょっと迷いがあったけれど、ええい、と新幹線に乗った。

そのときのニカさんのライブはすばらしいものだった。歌を聞きながらおなかでぐりぐりと動いていた子は1歳目前になった。
今日は、今年のライブのことを書かなきゃいけないからその話は置いておくのだけど、でも去年のあの日があったから、今年「また二階堂さんのライブやることになった」と連絡をもらったとき、乳飲み子連れて、どうやって行くべきかと一瞬悩んだものの、行かないという選択肢は、すでにないのだった。

今年は夫に運転を頼んで車で。4時間半くらいだったか、案外あっというま(運転もしてないのによくいう)。
早めに着いて、ニカさん一行や北書店の佐藤さんたちと再会。お店の前でうろうろしていると、設営中の店内を覗いたひとが何度も「今日は何があるんですか?」「おやすみですか?」と聞いてきた。彼らにとっては、散歩中や学校帰りに本屋さんによる普通の日。オープン前にお店の前にずらりと並んだお客さんにとっては、広島から来た歌手を迎える特別な日。

去年は、「女はつらいよ」から始まったんだったな。ニカさんが急にフルートを吹いて出てきたからちょっとおかしかった。そんなことを思い出しつつ待っていると、今年の1曲めは「萌芽恋唄」。お店に集まった80人近くのひとが、歌が始まるとぐぐぐと引き寄せられるのがわかる。

どこか、友達の家でしゃべっているようなゆったりとリラックスしたニカさん、と、(おそらく)たくさん来ていた初めて見るお客さんをぐいぐいと自分の世界に連れて行くニカさんがいっぺんに見られる。話しながらふらっと歌い始めたり、踊りだしたりもする。広島の話をしたり、新潟のことをお客さんに聞いたり。
その雰囲気のおかげもあってか、カバーもたくさん飛び出した。ニカさんなりの新潟をイメージした曲はなんと「ロマンスの神様」(スキー場のイメージらしい)。「ジャズっぽいアレンジ」を目指したというけどほとんど演歌だったよ。長渕剛の「good-bye青春」は気に入ったフレーズを「ココかっこいいからもっかい歌おう」と2回歌う。おちゃらけてるようだけど、でもその歌声がまた曲に合っていて、カッコ良かった(加藤登紀子みたいだった!)。
そんな、ポンポンと繰り出される歌の一つひとつから、きっとみんなにとってすごく身近なひとに感じられたことだろうと思う。
そして身近に感じたひとが、ふっと表情をかえて「一本の鉛筆」や「にじみ」といった、さらりと聞き流せない歌を歌うのを見て、また不思議な気持ちになったのだと思う。

   

ニカさんの曲のなかではすこし古い曲である「脈拍」は、北書店店主・佐藤さんからのリクエスト曲だった。最近のニカさんのライブではあまり見られない、外に魅せるのではなく内側に入り込むような歌い方で、ともすればそれは「マニア」や「大ファン」ではないお客さんを置いていきがちになるものだと思うけれど、この日、その曲があまりにしっくり来たのはきっとここが書店だからだ。本を買って読むというごくごく個人的なことのための場所が、「脈拍」を歌うニカさんの姿にぴたりと合っていた。これも、やはりニカさんの歌手としてのひとつの姿なのだと、本に囲まれて目を閉じてギターを弾きながら歌うニカさんを見て思った。北書店でのニカさんのライブは、早くも特別なものになった。


2015-10-27 | カテゴリー つれづれ, 屋上日記 |